オブラドール大統領によるナショナリズムとポピュリズムに基づく政治は、財政赤字を拡大させるなど大きなリスクをはらんでいる[定例記者会見に臨むオブラドール大統領=2024年4月8日](C)AFP=時事

 メキシコはいま投資ブームに沸いている。コロナ禍と米中貿易摩擦はグローバルに広がるサプライチェーンの脆弱性を露呈させた。サプライチェーン断絶のリスクを軽減するために、企業は市場近くに生産拠点を移すニアショアリングの動きを強めている。移転先として注目を集めているのが、米国の隣国メキシコである。昨年には電気自動車の米国テスラが、今年に入り中国BYDが新規大型投資を発表している。おりしもメキシコは6月2日に大統領選挙と国会議員選挙を控えている。好調な経済の追い風を受けて、大統領選では現職アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(通称アムロ ※イニシャルA.M.L.Oから)の後継者クラウディア・シェインバウム女史の当選が確実視されている。

 ニアショアリング投資先の必須要件は大市場への近さであり、この点でメキシコの優位は揺るがない。しかしメキシコはこの優位を減殺する隠れたリスクも抱えている。筆者が懸念するリスクを3つあげれば、現政権のナショナリズムとポピュリズム、財政赤字の拡大、悪化する治安となる。

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