
EUの農家は鬱屈した不満をデモや道路封鎖というような強硬な手段で訴えた[2024年1月30日、フランス東部ストラスブール近郊でトラクターを走らせ高速道路を封鎖する農民たち](C)AFP=時事
フランスは農業大国である。欧州連合(European Union, EU)随一の規模を誇り、EU全体の約18%の農業生産を同国が担っている。とりわけ薄力粉などの原料となる軟質小麦に関してはEUの生産量の28%をフランス産が占める1。共通農業政策は1962年に導入されて以来、現在のEUの諸政策の要として鎮座し続けている。そして欧州統合というヨーロッパ史上稀にみる斬新な政治経済上の事象は、農民という比較的保守的な傾向を帯びる人々に多大な影響を及ぼすかたちで進行することとなった。フランスはまさにそうした国家の一つである。
2020年段階で、EUの土地面積の38%が農業関連の用途にあてられている。2023年から2027年まで適用される共通農業政策に割り当てられる予算は3870億ユーロ(約62兆円 ※1ユーロ160円換算)にのぼり、EU予算の3分の1を占める。フランスのような農業大国にとって欧州統合がいかに重要か、これだけでも理解できるであろう。時々聞こえてくるフランスのEU離脱という話は同国にとって自滅行為である。
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