習近平政治の政治エリートは、なぜ自らを窮地に追い込むのか[第14期全人代第2回会議での習近平国家主席=2024年3月8日、中国・北京](C)EPA=時事

 中国は何処にゆくのか。急速な経済成長にともない国力を増大させた中国は、国際政治の力学に影響を与え、既存の国際秩序の変動を牽引する大国としての存在感を高めている。いったい中国は、その力をどの様に使おうとしているのか。しかし、中国をめぐる、より根源的な問いは政治にある。なぜ、一党支配は続くのか。支配はどの様に続くのか。この問いに答えるためには、中国政治の現在地を理解する必要がある。 

国務院総理の記者会見中止が発する問い

 2024年3月、全国人民代表大会(全人代)は、過去30余年続けてきた大会閉会直後の国務院総理記者会見を中止すると発表した。国務院総理の記者会見は、1988年4月の第7期全人代第1回会議の閉会後、李鵬国務院総理が実施したことからはじまる1。全人代は、1989年と1990年に記者会見を設けなかったが、1991年に再開し、それから2023年3月まで、毎年、開催してきた。

 国際社会が中国指導部の政策選好を把握できる機会は少ない2。会見の場での国務院総理の発言は、原則的で、形式的なものかもしれないが、その所作や、記者会見での発言とその後の報道内容の相違から、中国政治の方向感をつかみ取ることができるだろう。そのため日本を含めた海外の新聞報道は、この中止の決定を好意的に受け止めなかった。

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