年初来の金価格高騰は何を示すか――プライベートクレジットの潜在リスクも反映?
2024年6月11日

様々なリスクを織り込み上昇している金価格だが、情勢が変われば下落のリスクもある(C)時事
年初来、目を見張るスピードで上昇してきた金市場は、5月20日の1オンス約2450ドルを上値に、その後やや価格は下落しているものの、高値を維持している。
金価格は金利と物価上昇率の関係で価格が決まる。金利よりも物価上昇率の方が高い場合、金価格は上昇する。例えば金利が2%で、物価上昇率が4%であれば金は「モノ」であるため4%で上昇することが期待されるため、2%で資金を調達して4%で運用することが可能になるからだ。逆に金利が物価上昇率を上回った場合、金価格は下落することになる。このとき、金利から物価上昇率を引いたものを実質金利と呼び、実質金利がマイナスになるときには金価格が上昇、逆にプラスになる場合は金価格は下落する。
しかしながら、近年では過去みられていたいわゆる教科書的な実質金利との負の相関が薄れてきている。
リスク・プレミアム拡大の主要因は「3つの戦争」
弊社の金価格分析モデルでは、実質金利で説明可能な部分を金基準価格、それ以外の部分をリスク・プレミアムと区別している。このリスク・プレミアムには、政府がデフォルトしてしまうリスク(ソブリンリスク)、企業が破綻した時の信用リスク(CDS)、戦争等の地政学リスクなどが含まれると考えられるが、2022年のウクライナ侵攻以降、このリスク・プレミアム部分が金価格に占める比率が急速に高まっており、最近では6割がリスク・プレミアムというような状態が続いている。つまり、金利や物価以外の材料が金価格を押し上げているのだ。
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