「10月7日」以後の中東(2)ハマースの攻撃は何を狙ってのものだったのか?
2024年6月12日
ハマースによる10月7日のイスラエル領内への越境攻撃は、何を目的として行ったのだろうか。ハマースの側の証言も記録も得られない以上、確定的なことは言えない。しかし事件直後から、次の二つの説が西側のメディアでは事実であるかのように語られた。
第一は、「ハマースはイスラエル領内に攻撃を行うことでイスラエルによる苛烈な反撃を引き起こし、それによってイスラエルへの国際的な批判を高めることを目的としていた」という説である。これは完全に否定することはできないものの、疑わしい説である。
そもそもハマースのガザでの威信は、イスラエルに対して一矢報いる「力」を示し、それによってパレスチナ人に誇りの感情を一瞬でも取り戻させるところにある。イスラエルに徹底的に攻撃されて壊滅させられて被害者としての哀れみを乞うことはハマースの支持を高めない。たとえ1勝100敗であっても、とにかく「1勝」してみせることがハマースにとって最重要の使命であり、2023年10月7日に、イスラエル側の油断もあり、予想外の規模に拡大することが可能になったというのが実態だろう。
ハマースの攻撃部隊そのものは、小規模にイスラエル領に侵入し、イスラエルの歩哨の兵士や、孤立したキブツ(共同体)から一定数の人質を取り、それを交換条件にイスラエルと交渉し、特にイスラエルに拘束されているパレスチナ人の解放をもたらして、ガザ地区やヨルダン川西岸での支持を取り戻すことが直接的な目的であっただろう。
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