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【前回まで】江島元総理と南郷が待つ上野へ向かう車中で、都倉防衛大臣は二重底に隠したスマホを取り出した。中国国家安全部の劉唯から、接触を求めるメールが届いていた。

Episode6 一世一代

 

18(承前)

 大臣就任以来、日本の異常性を痛感する日々が続いている。

 自衛のために配備している武器のほとんどは、使われないまま耐用期限が過ぎ、新しい物と入れ替わる。戦争というリスクに対する掛け捨ての損害保険のようなものだ、とある防衛幹部に言われたことがある。

 言い得て妙だと思う一方で、外国から攻め込まれた時に、日本は本当に自衛できるのだろうかと考えると、心もとない。

 周囲を海に囲まれた海洋国家は、陸続きで国境を接している多くの諸外国と比べれば、安全度は高いという。

 しかし、日本の周囲は「危ない国」ばかりだ。北西にロシア、西に朝鮮半島、さらにその背後から南西に向けては中国がいる。太平洋が隔ててはいるが、東隣はアメリカだ。

 武力行使を辞さない軍事大国に囲まれている日本の立地は、見方次第では世界最悪と言える。

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