アンドリイウカのアナトリー(右)。筆者の名前を覚えていた (筆者撮影、以下すべて)

 

ウクライナ讃歌

 1936~37年、人民戦線の義勇兵としてスペイン内戦に参加した英作家ジョージ・オーウェルは、その体験をまとめた『カタロニア讃歌』で、戦争を生きる庶民への深い共感を綴った。ルポルタージュの名作として知られる。

 本連載は、オーウェルの筆と勇気に遠く及ばない。にもかかわらずその書名を借りて『ウクライナ讃歌』と名付けたのは、市井の人々にまなざしを向け、その姿を記録しようとした点で重なると思うからである。

 自由と民主主義を希求する点でも、オーウェルの戦いとウクライナの戦いは共通している。ただ、異なる面も少なくない。オーウェルは、人民戦線を支配するスターリン主義を厳しく批判し、そこに戦いの限界を感じとっていた。大国ロシアと対峙するウクライナに、そのような教条主義が入り込む余地はない。また、『カタロニア讃歌』は結果的に敗北の記録となったが、『ウクライナ讃歌』はそうならないだろう。

 随時掲載する『ウクライナ讃歌』は、ウクライナ政府や軍の政策、戦いぶりを賛美するものではない。苦難を耐えつつ、新たな世界を目指すウクライナの人々への敬意を表したものである。過度に持ち上げることなく、逆に軽んじることもなく、等身大のウクライナの姿を伝えられたらと思う。

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