ロシア・ウクライナ戦争「3つの停戦条件」を考察する――抑止体制、境界線管理、緩衝地帯
2024年6月27日

多くの国が参加したウクライナ平和サミットだが、不参加の国も少なくなかった[前列左からスイスのイグナツィオ・カシス外相、ヴィオラ・アムヘルト大統領、ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領、アンドリー・イェルマーク統領府長官=2024年6月16日、スイス・スタンススタッド](C)EPA=時事
ロシア・ウクライナ戦争をめぐって、SNS界隈などで現実を単純化した党派的な言説が横行している。戦況の行き詰まりを反映して、人間的な争いの様相も、陰湿化の度合いを強めてきているようだ。だが人間関係の小競り合いは、現実逃避でしかない。アメリカでは「ウクライナ支援を止める」と明言しているドナルド・トランプ前大統領の返り咲きの可能性が高まっている。これはウクライナ支援体制の根本的な転換を意味する。今のままでは、やがてウクライナと支援諸国の間で、責任のなすりつけあいが始まるだろう。日本にとっても、最悪の結末である。
ウクライナ周辺をめぐる構造的な世界政治のせめぎあいの複雑さを、「とにかく悪いのはプーチン」と唱えるだけで過小評価することは、正しくない。国際秩序の否定になるので戦争を止める話は一切してはいけない、という主張も、同様である。仮に領土の譲渡は絶対に認めなくても、なお停戦を交渉しなければならない現実は発生しうる。トランプ大統領が再現すれば、停戦合意は一つの現実的な議題となってくる。その際に、「トランプも悪い、アメリカ人も悪い……」とつぶやくだけで、ただ狼狽し続けていくわけにはいかない。日本にいる我々にとっても、思考の実験は、進めておかなければならない。
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