拘束された元知事の軌跡――「ウクライナ軍はお前を殺すだろう」
2024年6月29日

ミコライウ・南ブーフ河畔の夕暮れ(以下、特記のないものはすべて筆者撮影)
人口約50万人のミコライウは、ウクライナ南部だと百万都市オデーサに次ぐ規模の街である。黒海から南ブーフ川を数十キロさかのぼった河岸の高台に位置し、古くから造船の街として知られた。ソ連時代は閉鎖都市として外国人の訪問が禁じられ、空母「キエフ」「ミンスク」はいずれもこの街の「黒海造船工場」で建造された。現在も、欧州有数の造船所や国立造船大学を抱えている。
筆者がこの街を訪れるのは2度目である。前回の2022年9月はまだ、隣接するヘルソン州のドニプロ川右岸が解放されておらず、そこに陣取るロシア軍から発射されるミサイルやロケット弾に、街は苦しんでいた。通常だと発射から着弾まで何分かの合間があるため、人々は警報を聞いて避難できる。ところが、ミコライウはロシア軍陣地から近すぎるため、発射後すぐに着弾してしまう。着弾した後に警報が鳴り出す始末だったという。開戦から前回訪問時までの197日間で、ミコライウが攻撃を受けなかったのは29日間に過ぎなかった。多くの市民は脱出し、普段の3分の1程度の人口になった街で見かけるのは、軍人とお年寄りばかりだった。
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