手間チャプチェ

執筆者:阿川佐和子2024年7月11日
チャプチェの主役は春雨(写真はイメージです)

 近所に韓国食料品店がある。以前から気になっていたのだが、先日、思い切って入ってみた。なにも買う当てはなかったが、他に客がいなくて、お店のお兄さんがいい感じののほほんモードだったので、買わないと申し訳ない気がしてきた。そこで思い出した。

「韓国春雨、ありますか?」

 するとのほほんお兄ちゃんが、のほほんのわりにはすばやく棚に手を伸ばし、

「はい」

 特大ポテトチップスかと思うほどの大きさの袋を差し出した。中には日本の春雨より太くて茶色い色をした乾燥春雨が詰まっている。こんなにたくさん。一瞬、そう思ったが、目の前ののほほん君がニコニコしているので、

「じゃ、これ一つ」

 すると、

「これもありますよ」

 のほほん君が『チャプチェの素』という袋を手にしている。うーん、それはいらないかな。笑いながら首を傾げたら、ニッコリ笑って素直に引き下がった。いい人だなあ。さらに好感を持った。そこで、春雨だけでは悪い気がして、

「キムチはありますか?」

 のほほん君がまた店内をススッと移動して冷蔵ケースを指さした。

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