イスラエル絶対擁護というドイツの「国是」(前編)|90年代に起きた意識の転換
2024年7月9日

ジャーナリストで作家のシャルロッテ・ヴィーデマン氏は、ドイツ国内ではイスラエルをめぐって自由な発言が難しい風潮があると指摘する(筆者撮影)
2024年5月下旬、ドイツの首都ベルリンの一角で、現地のユダヤ団体がパレスチナに連帯を示す行事を開催した。主催したのは、リベラル系のユダヤ団体「Jüdische Stimme(ユダヤの声)」だ。会場では、パレスチナ解放闘争のシンボルでもある白黒網目模様のクーフィーヤを巻いたユダヤ系の市民や現地のドイツ人が参加し、パレスチナ占領を追ったドキュメンタリー映画が公開された。
会場となったのは、中東系移民が多いベルリン南部ノイケルン地区にある民間施設。しかし、この施設での開催となったのには訳がある。
Jüdische Stimmeは、ユダヤ人が中心となり、2003年にベルリンで創設された。中東における和平を求め、現在はイスラエルによるガザ地区での軍事作戦を強く批判する立場を取り、ドイツ国内各地で反戦デモを行っている。中にはホロコースト生存者の子孫もいる。しかし、同団体は、イスラエルに批判的な立場をとっていることから、ドイツ当局から「定期的な調査だ」として今回、団体の銀行口座を凍結された。当局からこうした扱いを受けているため、同団体の行事のために会場を提供すれば、貸し出した施設自体が“反ユダヤ主義的”と批判されかねない。このため、Jüdische Stimmeは施設の利用をことごとく拒否され、ようやく見つけることができたのが、この民間施設だったのだ。
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