当選したペゼシュキアン次期大統領が今後、ハメネイ最高指導者とどのような個人的関係を築くのか注目される[決選投票を前に群衆に呼びかけるペゼシュキアン氏=2024年7月3日](C)EPA=時事

 2024年7月5日、イランで第14期大統領選挙の決選投票が行われた。最終結果発表では、改革派のマスード・ペゼシュキアン候補の当選が発表された。故エブラヒム・ライシ大統領の掲げた保守強硬路線からの大きな転換を予期させる一報は、国内外に新鮮な驚きをもたらした。

 ペゼシュキアン次期大統領はイランをどのような方向に向かわせるのだろうか。現状において不確定要素は多いが、イラン体制(アリ・ハメネイ最高指導者を頂点とし主に治安機関・宗教界から成る中央権力)の想定され得る狙いから補助線を引きつつ、今次選挙の持つ意味と同国の内外政への影響を考察したい。

不慮の事故で1年前倒しになった大統領選挙

 今回の大統領選挙は、5月19日にヘリ墜落事故で死亡したライシ大統領の後継を選ぶために行われたものである。イランの大統領は任期4年であることから、仮に同大統領が生きていれば2025年までの任期があったが、突如他界したため1年前倒しで行われることになったのである。憲法131条では、大統領が死亡した場合、第一副大統領が大統領代行を務め、後任については50日以内に選挙を通じて選ばれると規定されている。

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