連載小説 オペレーションF[フォース] 第74回
2024年7月20日

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【前回まで】中国国家安全部の劉唯は、都倉と米国防長官の会談予定を掴んでいた。なぜハワイなのか、なぜ1対1なのか…。米国は都倉を次期総理に考えていると劉唯は告げた。
Episode6 一世一代
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翌週、磯部は、都倉大臣の随行として政府専用機で、ハワイに向かった。
防衛省のみならず、総理からも会談の目的について具体的な内容をアメリカ側に求めたのだが、返ってきたのは、「新防衛相と改めて日米安全保障条約の今後について、腹を割った話をしたい」という抽象的なものだった。
防衛省の対米担当部署や、自衛隊の各幕僚監部のネットワークを通じても情報収集を行った。
そこで、ぼんやりと浮かび上がってきたのは、防衛費の更なる拡大、米軍への「思いやり予算」の増額、空母艦載用の戦闘機F35Bの早期配備などだった。
だが、その程度なら、このタイミングで防衛大臣をハワイまで呼びつける必要はないだろう。他の理由が、あるはずだ。
磯部は、かつて駐米大使館に勤務したことがある。その期間、国防総省(ペンタゴン)やアメリカの情報機関の関係者とのネットワークも構築した。
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