リベラル派のケタンジ・ブラウン・ジャクソン判事は反対意見の中で、「シェブロン法理の破棄で、連邦政府機関は訴訟の津波に直面する」と懸念を表明した[連邦最高裁=米国・ワシントンDC](C)AFP=時事

 日本において、法律は国会でつくられる。しかし多くの場合、法律で細かい事項もすべて決めてしまうのではない。法律の運用を現場に即した柔軟なルールにするため、内閣政令や省令などの行政立法で政府に裁量を与え、細かいことを委ねる仕組みが採用されている。

 米国においても、立法機関である米議会が知り得ない現場の実態に合わせて、連邦政府機関が法律の施行規則を進化させることができる「現場主義」が過去およそ40年にわたり採用されてきた。

 それが、「法律に曖昧な条文がある場合に規制当局がそれを解釈できる」とした1984年の米連邦最高裁判所による一判例で、のちに高位の司法ドクトリンとして認知されるようになった「シェブロン判決」である。

 ところが、シェブロン判決を出した当事者である連邦最高裁が6月28日に、その法理自体を無効にした。政策に関する問題については立法を通じて米議会が直接的に対応するよう求めるとともに、規制当局が越権した場合には、それを抑制する責務を下級裁判所に負わせる内容だ。

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