日本の「空」の行く末は……(C)新潮社

 コロナ禍の収束によって、世界の移動需要、特に観光需要は急激に回復し、以前の状態をもしのぐ勢いで伸びている。その結果、世界の主要観光地ではオーバーツーリズムが発生し、対策が急がれる事態となっている。

 中でも航空業界では供給体制の拡大に追われ、人手不足の問題が深刻化した。航空機の運航に欠かせないパイロット、整備士、キャビン・アテンダント(CA)などである。

 このうち、日本で特に問題となっているのがパイロット不足である。バブル期に採用・育成したパイロットが2030年前後に大量に定年を迎える、いわゆる「2030年問題」が差し迫っているのだ。これによる欠員をどう補充するかが喫緊の課題になっているのだが、決して簡単な問題ではない。「日本の空」で今何が起こっているのか。

余剰人員化を恐れ採用数を増やせなかったパイロット

 まず、パイロットを育成するには多大なコスト(1人あたり数億円)と長い時間(機長になるには10年以上)が必要となる。その上、ただ多くのパイロットを育てればいいというものでもない。

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