習近平の腹心が発表した「五反闘争」論文に、人々は毛沢東時代を想起して震撼した[陳一新国家安全相=2022年10月、北京市](C)時事

「国家の安全は、中国式の現代化が長期的に発展していく上での重要な基礎であり、国家の安全の維持をより突出した位置づけとした」 

 中国の習近平国家主席は、7月15日~18日に開かれた共産党第20期中央委員会第3回全体会議(三中全会)で採択された「より一層の改革の全面深化と中国式現代化推進に関する中共中央の決定」(以下、「決定」)に関してこう説明した 。

 2023年秋に開催されると見られていた三中全会をめぐっては、不動産不況や地方財政の悪化を受けて経済再生への処方箋が描かれるかが内外で注目された。23年に82%も減少した外国企業の対中直接投資を回復させるためには、「反スパイ法」強化など国際社会が懸念する「国家安全」色を弱める対外向けメッセージが必要だったはずだ。しかし結果は逆に、包括的な経済再生策よりも「国家安全」を優先する方針を明確にした。

 習近平政権で何が起こり、その結果として中国社会がどう変化したか検証したい。

SNSでの宣伝活動も強化する「国家安全部」

 習近平への権力集中が進み、いわゆる一強の「個人体制」が加速して以降、中国官僚機構の中で強大化したのが「国家安全部」と「共産党中央宣伝部」である。これに「公安部」を加えた統制三機関はバラバラに動く傾向が強かったが、習近平がトップを務める「中央国家安全委員会」が2014年に発足すると、習近平が提唱した「総体的国家安全観」の掛け声の下、トップ主導で協調体制が構築・強化された。

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