エネルギー安全保障と脱炭素化の両立には原子力の活用が重要との認識が広がっている[電源開発(Jパワー)が青森県で建設中の大間原発の原子炉建屋=2023年3月9日](C)時事

 エネルギー安全保障の強化と脱炭素化の推進の両立を図るエネルギー転換を進めていく上で、原子力発電の役割に対して世界的な関心が高まっている。それに加えて、生成AI(人工知能)などの利用拡大に伴う新たな情報革命の進行で、安定的なゼロエミッション電源へのニーズが急速に高まる兆しも表れており、その点でも原子力への関心が高まる状況となっている。

 ウクライナ危機は、国際エネルギー価格の高騰と供給不安の深刻化を生み出し、エネルギー安全保障の重要性を世界に改めて認識させる契機となった。それ以前は、世界のエネルギー問題において最も重要な課題は脱炭素化であり、如何にカーボンニュートラルを実現するか、という問題に関心は集中していた。

 しかし、日々の暮らしや経済・産業活動に不可欠なエネルギーの価格が高騰し、供給不安が深刻化して状況は大きく変わった。エネルギーの安定的で手頃な(アフォーダブルな)価格での確保、すなわちエネルギー安全保障が一気に最重要の課題として認識されるようになったのである。ウクライナ危機によってエネルギー情勢が大揺れとなった2022年、特に危機が深刻であった欧州では、二酸化炭素(CO2)排出が増加することを覚悟してでも、石炭火力の焚き増しなどでエネルギー安定供給を図る取組みも進められた。危機に瀕して、エネルギー安全保障が脱炭素化より優先された一面として見ることもできる。

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