9月の自民党総裁選には、現時点で11人が立候補の意欲を示していると伝えられます。現在の立候補制度が導入された1972年以降では、候補者が最も多かったのは2008年と12年の5人だそうです。今回はこれを上回る勢いです。
これは自民党の活性化なのか、あるいはタガが外れた狂騒か。派閥解体前ならばこの百花繚乱はなかったでしょうし、必ずしも否定すべきだとは思いませんが、しかし政策にせよ党の将来像にせよ、各候補とも具体的な見解がほとんど伝わらないのが気になります。それは推薦人20人を確保した候補が絞られてから……というところかもしれませんが、このお祭り騒ぎ感はどうも落ち着かないものがあり、今回は去り行く岸田首相の評価を中心にピックアップしました。
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Never a zealot, Fumio Kishida showed a surprising fearlessness【Leo Lewis/Financial Times/8月15日付】
「2021年の首相就任からしばらくの間、非イデオロギー的だと目されていた岸田文雄は、イデオローグへの転進に熱中した。彼の構想によると、日本は『新しい資本主義』という、高揚感はあるが漠然とした理念を受け入れる必要があった。これは、賃金を引き上げ、中流階級に優しく、富を分配するシステムであり、日本をより豊かな時代へと導くものだった」
「水曜日[8月14日]に退陣を発表した、テクノクラート然とした岸田は当初、華々しくはあったがすでにほぼ行き詰まっていた経済・市場活性化改革パッケージ、『アベノミクス』――彼の先々代の首相でありイデオローグとして頂点に立った故安倍晋三が打ち出した――に対する哲学的な代替案を日本に提示しているように見えた」
「岸田は狂信者の振る舞いを続けることはできなかった。意義ある政策枠組みにしてスローガンだった新しい資本主義は、最初の1年を辛うじて乗り切っただけで、ほとんど失敗に終わった」
終戦記念の日の前日に、9月末での退任を発表した岸田首相について、まず経済政策の面から厳しい評価を下してみせるのは、英「フィナンシャル・タイムズ(FT)」紙の東京特派員、レオ・ルイスだ。
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