スターマー新政権は、議会で盤石の基盤を得た一方、自党への明確な批判にもさらされている[英国のキア・スターマー新首相、2024年8月6日](C)EPA=時事

 2024年7月4日に実施された庶民院(下院)総選挙の結果、早くから確実視されていたとおり、キア・スターマー率いる労働党による14年ぶりの政権交代が起きた。労働党は、歴史的惨敗を喫した前回2019年総選挙から議席をほぼ倍増させ、総議席数650の6割を占める411議席(議長席を除く)を獲得した。保守党は251もの議席を失い、野党第一党の座は守ったものの121議席に終わる大敗北であった1

 労働党と他の政党との議席差は170を超え、新政権は議会で盤石の基盤を得た。だが、労働党の得票率は33.7%にとどまり、単独政権として史上最低である。労働党が民意の力で政権に押し上げられたというよりも、保守党に対する有権者の憤りがピークに達し、19世紀以来の党史上最悪の惨敗へと逢着した選挙であった。近年の総選挙では投票者の10人に1人が特定の目的のために戦術的に投票するが、今回は5人に1人が保守党を負けさせるためにそれを行った2。その最大の受け皿になったのが、イングランド南部で保守党票を手堅く掘り起こした自由民主党であり、前回より64議席を上乗せする72議席を獲得した3。保守党は現職閣僚12名に加えて、元首相リズ・トラスら重職経験者26名が落選した。

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