ASEAN諸国が中国との間に「双贏(ウイン・ウイン)関係」を見出す理由を、日本は直視する必要がある。[北京を訪れたヴェトナムの最高指導者トー・ラム共産党書記長(左)と握手を交わす習近平中国国家主席=2024年8月19日](C)AFP=時事

 中国の裏庭とも呼べるミャンマー、ラオス、タイ、カンボジア、ヴェトナムに広がる東南アジア大陸部を舞台に中国主導で進められている高速鉄道ネットワーク「泛亜鉄路」の進捗状況に関しては、これまでも折に触れて論じてきたが、7月に入るや関係各国の間で新しい展開がみられるようになった。

 これまでの経緯からして、一連の動きが順調に進むとは思えない。だが紆余曲折を経ながらも、2005年段階で中国(胡錦濤政権)が明らかにした構想に沿って泛亜鉄路が南下を続けていることは紛れもない事実である。

 確かに遅々とした歩みではあるものの、泛亜鉄路をめぐる目下の国際環境から考えるなら、その“果実”が当初の狙いに近い形で中国の手に収まってしまう可能性は十二分に想定できる。そうなった場合、東南アジア大陸部からマレー半島(マレーシア、シンガポール)へと跨がる広大な地域に及ぶことになる中国の影響力を押し返すことは、外交・軍事・経済などの諸要素を統べる総合的な国力で対応しない限り、やはり容易くはないはずだ。

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