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【前回まで】北朝鮮のミサイルが遂に東京湾に落ちた。タンカーが被弾し、死傷者多数。反撃態勢の整備を訴えようとする都倉防衛大臣に、制服組出身の樋口は冷静な対応を求めた。

 

Episode7 独立独歩

 

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 官邸到着直前に、防衛省事務次官の辻岡から、“各幕僚長は市ヶ谷で待機、というご指示が官邸よりございました”というメールが届いた。

都倉が総理執務室に到着すると、南郷は人払いをした。

 官房長官をはじめ主要閣僚は、顔をこわばらせて部屋を出ていった。

 ソファに都倉を誘い、正面に陣取った南郷が口を開いた。

「私は、今晩、辞職する」

「総理、それは無責任が過ぎます!」

 南郷が、「まあ、待て」と言いたげな身振りで、いきり立つ都倉を抑えた。

「最後まで話を聞いてくれ」

「失礼しました。伺います」

 短慮な自分に驚き、そうとう精神的に参っているのだと自覚した。

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