連載小説 オペレーションF[フォース] 第83回
2024年9月21日

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【前回まで】都倉響子を総理に――それがオペレーションFのラストミッションだった。総理就任を固辞する都倉を説得するため、周防は危険を承知で切り札を出す覚悟を固めた。
Episode7 独立独歩
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防衛省の記者会見場で待機している草刈の隣にいきなり大柄な男が腰を下ろした。
「東條さん!」
暁光新聞の伝説のスクープ記者、東條謙介[とうじょうけんすけ]、通称「闘犬」は、過去に3度、ペンの力で総理大臣を辞職に追い込んだと言われている。
関取と見まがうばかりの巨体に、脂ぎった顔、嫌みなほどの大阪弁。どんな手管を使うのか、日本中にディープスロート級の情報源を、無数に有しているらしい。
草刈は、社会部に在籍した経験はないが、同期が彼の秘蔵っ子なので、二度ほど宴席に呼ばれたことがある。
「摂っちゃん、大臣は、暫く出てけえへん。ちょっと顔貸してくれるか」
「闘犬」に言われれば、「否」はない。草刈は、黙って巨体の後についた。
廊下に出ても、東條は足を止めない。そして、「使用中」と示されている会議室に、草刈を連れ込んだ。
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