中国はレアアースの精製・精錬段階で高いシェアを占める[“レアアースを生かした街作り”を進める中国・内モンゴル自治区包頭市には「レアアース通り」もある=2024年07月14日](C)時事

 市民生活や経済活動、そして国家運営にとって必要不可欠な物資であるエネルギーを巡る国際情勢は厳しさを増し、将来の不確実性が高まっている。ウクライナ危機によってエネルギー安全保障問題が世界的に脚光を浴び、エネルギー政策における最重要課題となった。他方、気候変動防止も待った無しであり、脱炭素化を進めていくことも世界の課題である。こうして、エネルギー安全保障と脱炭素化の両立のためのエネルギー転換推進が今日では最重要課題となったが、これはまさに容易ならざる挑戦である。エネルギー転換推進によってコストが上昇していく可能性があり、その場合の政治・社会・経済的なインパクトは、エネルギーが必要不可欠な物資であるだけに極めて大きい。世界の主要国はそのコスト上昇を抑制・最小化しつつ、エネルギー転換を進めることが求められている。

 エネルギー転換推進が容易ならざる挑戦となる理由はもう一つある。米中対立の激化や、西側と中ロの対立の深刻化など、世界の分断は国際的な秩序を動揺させ、世界経済や貿易・投資の流れに影響を及ぼしつつある。分断が深刻化する前は、自由貿易と国際分業を徹底することで、最も低コストの生産・供給への集中を世界全体で追求することが「是」とされてきた。しかし、分断後の世界ではそうはならない。戦略的重要性を有する資源・物資・技術などは、出来るだけ国産化し、それを同盟国や戦略的パートナーとの間の供給チェーン構築・確立で補完する取り組みが進められている。

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