
ハリスの外交ブレーンたちの著書から読み取れるのは、トランプと大きく変わらない非介入主義の対外政策だ[今年4月、訪米した岸田文雄総理の歓迎晩餐会に出席したフィリップ・ゴードン国家安全保障問題担当副大統領補佐官(右)とレベッカ・リスナー同副補佐官=2024年4月10日、アメリカ・ワシントンDC](C)EPA=時事
9月10日の米大統領選テレビ討論でやはりそうかと思わせたのは、ドナルド・トランプが2回にわたるロシア・ウクライナ戦争でのウクライナの勝利を望むかとの質問に「戦争終結こそが米国の国益だ」と繰り返したことだ。つまりトランプのアメリカはウクライナの勝利を目指さない。この姿勢は9月27日のウクライナ大統領ゼレンスキーとの会談でも変わらなかった。国際法無視のロシアを許すな、自由民主主義は権威主義に勝利する、北大西洋条約機構(NATO)の団結を守る、といった米国を貫いてきた外交原則の消滅が誰の目にも分かった。米国はここまで変わったのかと唖然とする。
しかし、これはトランプの発言だ。果たしてカマラ・ハリスはどうだろうか。演説やテレビ討論ではウクライナも中国も中東も、バイデン政権を踏襲する当たり障りのない発言しか聞こえてこない。だが、副大統領のハリスを支え、ハリス政権誕生の暁には安全保障補佐官としてホワイトハウス入りするであろう外交専門家の著述や発言からは、トランプと大きく変わらない世界観、米国観、そして非介入主義の対外政策を浮き彫りにしている。結論から言えば、党派を越えて米国は自らが危うくなければ、世界の紛争解決に取り組む意志はない、ということだ。
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