ロシア・クルスク州への越境攻撃は戦線が膠着し、「牽制抑留」の目的は達成できなかった(筆者の分析に基づき編集部作成)

 

 ロシアのクルスク州に対するウクライナの越境攻撃は、8月6日の攻撃開始から2カ月が経った。当初は1週間で東京23区の2倍近い土地を一挙に占領したが、それ以降、占領地域の拡大、あるいはロシア軍の領土奪回ともに進展が見られず、戦況が膠着したままだ。
越境攻撃の目的の一つは、ロシア軍の猛攻を受けている東部ドネツク州の戦線からロシア軍部隊をクルスク州に転用させて引き留め(牽制抑留)、東部地域の戦況を有利にしようというものであった。一部のロシア軍部隊が東部ドネツク州からクルスク州に向かったという情報も流れてはいる。しかしロシア軍がポクロフスク方面を含む東部ドネツク州において猛攻を続けていることや、ウクライナ軍が新たな部隊を東部地域に増援し、防衛態勢を強化したとの報道からは、結局、この牽制抑留の目的は達成できなかったと見ていいだろう。

 ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領、オレクサンドル・シルスキー最高司令官は、この越境攻撃が、クルスク州からウクライナ・スムイ州に対し予定されていたロシア軍の攻撃計画を破綻させたと、9月5日以降、相次いで述べている。越境攻撃の意義を後から付け加えたようにも聞こえるが、この戦争全体の戦況を大きく変化させるまでの成果が得られていないことは事実だろう。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。