香港は引き続き外国企業にとって中国市場への玄関として有用だ(C)Maha Heang 245789/stock.adobe.com

 先日、今年3月の「国家安全条例」施行後、初めて香港を訪問した。この条例は、反政府的な動きを取り締まるため中国で可決され2020年6月に施行された「香港国家安全維持法」を補完するもので、スパイ行為や反乱の扇動、外国勢力による干渉などを犯罪として規定している。そのため、より厳格な取り締まりが行われるのではないか、しかも、香港市民だけでなく外国人も言動が制約されるのではないか、などと懸念されていた。

 実際に5月には、反政府活動を扇動したとして元民主派団体幹部ら7人が同条例による初の逮捕者となり、天安門事件のあった日と同じ6月4日にも、4人の逮捕者が出た。ただ、同日警察に連行された日本人1名を含む5人はすぐに釈放されている。その後は逮捕者に関する報道は少なく、国家安全条例が直接的にビジネスの障害となっている事例は確認されていない。そのため現地では、今回の国家安全条例の施行によって、北京政府が最重要課題と位置付ける「国家安全」への対応はひとまず整い、今後は次に取り組むべき課題である経済問題に本腰を入れていくのではないか、という認識も聞かれた。

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