麻生太郎首相が自らの手による衆院解散を決断し、衆院選の投票日を八月三十日に設定したことによって、政局は新たな段階に入った。すべての国会議員の関心は衆院選に向かい、寿命が決まった内閣はレイムダック化すると同時に、国会も空洞化するのは確実だ。今後は、永田町(国会議事堂や自民、民主党本部などの所在地)から国会議員は姿を消し始める。地元に帰って、選挙運動に専念するためである。 早期解散には、かねて自民党内に強い異論があったことはよく知られている。七月十三日の麻生首相の「解散宣言」には、そうした反麻生勢力による「麻生降ろし」の動きを封じ込める狙いがあった。 麻生首相が解散を決断しても、実際の八月三十日までは約一カ月半も期間があるため、論理的には依然として「麻生降ろし」は可能である。だが、衆院選の号砲が鳴った後の、議員たちの心境はしだいに「麻生降ろし」どころではなくなってくる。 六月下旬、自民党町村派会長の町村信孝前官房長官は、親しい記者たちを集めた会合で、解散後の政局についてこう予言したことがある。「首相に対する批判は、解散してしまえば過去のものになる。実際に選挙が始まれば、そんなもの関係ない。麻生降ろしなんて言っても、『それがどうした』ってことになるよ」

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