財とサービスの輸出に頼った経済成長から脱却できるか[大手銀行への資本注入など新たな景気刺激策について説明する藍仏安財政部長(中央)=2024年10月12日、中国・北京](C)VCG via Reuters Connect

 

需要不足と生産過剰が共存する中国経済

 不動産価格の低迷を原因とする不況が長引く中国経済だが、これまで習近平政権は、財政や金融を通じた需要拡大政策には消極的だと見られていた。しかし、9月下旬になり中国政府は積極的な景気対策を矢継ぎ早に打ち出しており、これまでの姿勢を大きく変えつつある。本稿では、9月以降の中国の需要拡大政策への転回と、その効果および問題点について検討したい。

 その前に、国内需要の落ち込みと、その裏返しとしての生産能力過剰の問題を同時に抱える中国経済の問題点について概観しておこう。

 まず押さえておく必要があるのは、中国政府はこれまで低迷する経済を、先端的な製造業の分野での積極的な設備投資を通じて生産効率性を上昇させるという、供給サイドを重視した政策によって立て直そうとしていた、という点だ。例えば、2024年3月に開催された国会に当たる全国人民代表大会の政府活動報告で、李強首相は「5%前後」という実質経済成長率目標を実現するための目標として、現代的な産業体系の構築と「新しい質の生産力」の発展を加速させるという方針を掲げている。同時に、積極的な財政政策を柔軟に行うという姿勢を強調する一方で、同年の財政収支の赤字を国内総生産(GDP)比3%に保つことを強調し、均衡財政の原則を維持する姿勢も示した。

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