経済政策への期待を高めて当選したトランプ次期大統領にとって、物価対策が特に重要な課題となる[フロリダ州パームビーチでトランプ当選を喜ぶ支持者ら](C)時事

実態は圧勝というより薄氷の勝利

 米国大統領選挙はトランプ対ハリスの歴史的な接戦が予想されていた。最悪の場合、2000年大統領選挙のゴア対ブッシュのフロリダ州の再集計をめぐる裁判闘争のようなものも想定され、不満を持った支持者による暴力の連鎖まで予想されていた。しかし実際にはあっさりと、トランプ勝利が決まった。

 なぜこれだけの接戦の予想にもかかわらずトランプ氏が7つの接戦州をすべて取る結果になったのか。そしてなぜ米国有権者が、2020年の大統領選挙では根拠のない理由で負けを認めず、2021年1月6日の支持者による議会乱入事件を引き起こし、その後には4つの刑事訴追を受け、うち一つでは有罪判決が下っているトランプ氏を再び選んだのか。

 まず、開票結果をみると、トランプ氏の勝利は圧勝とはいえないものだったことがわかる。7つの接戦州のうち、仮にハリス氏がすべて勝利すれば当選に必要な270人の選挙人を確保できたラストベルトの3州では、票差はすべて統計上の誤差の範囲の2ポイント差以内に収まっている。ウィスコンシン州で0.8ポイント差、ミシガン州で1.4ポイント差、ペンシルベニア州で2.0ポイント差である。接戦州7州すべてでトランプ氏がハリス氏に勝利したため、圧倒的な勝利に見えるが、実際にはトランプ候補にとっては薄氷の勝利であったとすらいえる。

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