2050年に世界全体で温室効果ガス(GHG)排出が実質ゼロになるというIEAのシナリオが注目を集めたが、それはあくまでも「目標」だ(C)SuPatMaN/shutterstock.com

 コロナ禍によるエネルギー需要の世界的な劇的減少、カーボンニュートラルの潮流の急速な加速、ロシアによるウクライナ侵攻とエネルギー危機の発生、ガザ危機やイラン・イスラエルの対立深刻化に象徴される中東情勢の激動など、2020年からこの方を振り返るだけで、国際エネルギー情勢は激震に晒され続けている。考えてみると、国際エネルギー市場では、過去も現在も、様々な予想外の撹乱要因や政策変更、技術進歩などによる大きな変化が次々に発生し、世界を変化させてきた。おそらく、今後もこうした想定外の激変は続くであろう。エネルギーの世界の未来は不確実性に満ちている、と言ってよい。

 にもかかわらず、エネルギー政策の立案や実行に関わる政策決定者や、企業としてのエネルギー選択や投資・調達の決定に携わる経営トップ・マネジメント層は、エネルギーの将来を予想しようと考え、長期の「見通し」を自ら持ちたいと考えている。未来の問題に備え、ありうる問題を克服し、さらなる発展や成長を望むからである。

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