BRICS首脳会議の期間中、挨拶を交わすプーチン露大統領と国連のグテレス事務総長[2024年10月24日、ロシア、カザン](C)EPA=時事

 アメリカの次期大統領がドナルド・トランプ氏に決まり、近未来に起きるであろう政策変更に注目が集まる。外交面では、ロシア・ウクライナ戦争への対応が大きな注目点だ。
お互いをよく知るトランプ氏とウラジーミル・プーチン露大統領が、米露の関係改善をどこまで、どのように牽引していくかが注目される。ただしそれは、両国が国益増進を求めながら、現在の国際社会の構造転換をどう捉えていくか、という大きな問題にも結びついている。注意深い分析を、継続的に行っていかなければならない。

 本稿では、トランプ当選をふまえつつ、BRICSの動向に焦点をあてる。なぜならトランプ氏の当選によってあらためて問い直される国際社会の構造的な転換について、一つのカギを握っているのが、BRICSだからである。

BRICSを使った「脱ドル化」を狙うプーチン

 プーチン大統領は米大統領選直後の11月7日、ロシアの都市ソチで開催されたヴァルダイ会議において、トランプ氏の暗殺未遂事件について触れながら、「命が危険にさらされた時の彼のふるまいに感銘を受けた」、「男として勇敢な態度だった」と語った。「アメリカの大統領は尊敬されなければならない」と主張するトランプ氏に、素直に敬意を表した形である。そして、トランプ氏との対話の可能性を排除しない姿勢を示した。ただし、すぐにロシアの政策を劇的に変更するわけではない、という慎重な態度だ。これは何を意味するのか。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。