盟主としての米国の存在を踏まえつつ、その他の「普通の諸国」をいかにまとめられるかが問われる[アントニー・ブリンケン米国務長官(左)とマルク・ルッテNATO事務総長=2024年12月3日、ベルギー・ブリュッセル](C)EPA=時事

 NATO(北大西洋条約機構)はかなり特殊な同盟である。創設から75年続き、現在では北米と欧州の32カ国が加盟し、加盟国はいまでも増え続けている。こんな同盟は、歴史をさかのぼっても例がない。「史上最も成功した同盟」と呼ばれるゆえんである。

 しかし、どれだけ特殊であっても、存在感が大きくなったために、NATOは現代世界における同盟の代名詞になった。アジアで多国間同盟の可能性が議論される際に、NATOは文字通りまったく関係ないにもかかわらず、「アジア版NATO」という言葉がすぐに聞かれる。

 以下では、筆者が2024年7月に刊行した『模索するNATO――米欧同盟の実像』(千倉書房)をもとに、NATOにみる同盟の本質を抽出していきたい。ここで取り上げるのは、他国に助けてもらうと同時に他国を助けること、利害の不一致は当然であること、つねに「受け身」の姿勢であること、そして強烈なピア・プレッシャーの存在という4つの点である。

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