
トランプ政権チームの停戦構想
ドナルド・トランプ氏は、大統領選挙勝利への自信を持っていたのか、4年前と違い、選挙戦以前から政権移行チームを発足させ、様々な移行準備を整えてきている。その一つが、ロシア・ウクライナ戦争停戦に向けた検討である。チームが考えているとされる和平交渉案は、「およそ1280キロメートルにわたり非武装地帯を設ける戦闘凍結案」であり、その条件は3つ。①ロシア軍に占領されたおよそ20%のウクライナ領土の現状固定化、②ウクライナのNATO(北大西洋条約機構)加盟に向けたプロセスを少なくとも20年間中断、③米国は引き続きウクライナに武器を供給、というものである(WSJ 2024.11.7)1。
この交渉案を提言しているのは政権移行チーム関係者3名のようだ。トランプ氏がウクライナ・ロシア担当特使に任命した元陸軍中将のキース・ケロッグ氏、及びJ・D・バンス次期副大統領、そして駐ドイツ大使を務めたリチャード・グレネル元国家情報長官代行である。ケロッグ氏は昨年6月、「戦線を現状のまま凍結し、ウクライナとロシアに交渉のテーブルについてもらう」と述べている(ロイター 2024.6.25)2。また、上院議員時代にウクライナ支援に反対していたバンス氏が昨年9月に策定した案では、ウクライナのNATO加盟を否定している。バンス氏は米ポッドキャスト司会者に対し、交渉案には、既存の前線に非武装地帯を設け、「厳重に要塞化」してロシアのさらなる侵攻を防ぐことが含まれる可能性が高いと語っている。さらに、グレネル氏は7月のブルームバーグとの円卓会議で、ウクライナ東部に「自治区」(詳細は不明)を設置することを提唱している。また、次期政権の大統領副補佐官兼対テロ対策上級部長に就任する予定のセバスチャン・ゴルカ氏は6月、英ラジオのインタビューで、トランプ氏が、ウラジーミル・プーチン大統領が和平協議への参加を拒めばウクライナに前例のない規模の兵器を供与すると脅して、交渉のテーブルに着かせると述べていた、と語っている(ロイター 2024.12.4)3。
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