トランプは国内と国際場裏で二重の現状変革に乗り出す(C)AFP=時事

 戦後日本が前提としてきたアメリカ主導の国際秩序はすでに融解しつつある――。第2次トランプ政権が一国主義的な政策を推し進めれば、この種の議論が数多くみられるようになるかもしれない。たしかにドナルド・トランプが唱えている政策は、関税や移民をはじめとして物議を醸すものが少なくなく、トランプはアメリカにおけるイベントではなく、トレンドを体現しているとみる向きも多い。また、中国の影響力拡大やロシアによるウクライナ侵略とその国際的な余波、グローバルサウスの存在感の高まり、国際経済関係の武器化、先端技術をめぐる主要国間の競争などといった大きなうねりが生じている中で、トランプがアメリカの世界への関わり方を変容させようとしているため、国際秩序が融解するといったイメージが跋扈しがちなのは不思議ではない。問題は、そうした不確実性と流動性を増す国際情勢の中で日本の対外政策のあり方を論じる際に、トランプの言動などが発端となって生じるアメリカに対する不信感に駆られて、短絡的で性急な結論を導くことである。そうした陥穽にはまらないためには、トランプが何を体現し、どのような政策を追求するのか、それが日本のような同盟国、ひいては国際秩序にいかなる含意があるのかを冷静に理解するところから出発する必要がある。

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