アグダムで見つかった地雷や不発弾(筆者撮影、以下すべて)

 ロシア・ウクライナ戦争中東の混乱の陰で注目度はあまり高くないものの、近年大きな変化に見舞われた地方が、ロシア、トルコ、イランという地域大国に囲まれた南コーカサス(アゼルバイジャン、アルメニア、ジョージア)である。アゼルバイジャン領ながらアルメニアが実効支配を続けてきたナゴルノ・カラバフ1を、アゼルバイジャンが2023年9月に制圧し、紛争の構図が一変した。これと前後して、自国の安全保障をロシアに依存してきたアルメニアは、欧米への接近を試みるようになった。その状況は本欄『アルメニア「サバイバル戦略の行方」』(24年10月25日から3回連載)2ですでに報告した通りだが、一方で豊富なエネルギー資源を誇るアゼルバイジャンは、制圧した地域の復興を進め、同時に国際的な影響力も強めて、地域大国の風格を帯びるに至っている。

 ナゴルノ・カラバフでは、アルメニア支配時代に退去を余儀なくされたアゼルバイジャン人国内避難民(IDP)の帰還が始まっている。その実情を見ることができないか。現地への外国人の立ち入りは依然として制限されているが、アゼルバイジャン当局と交渉した結果、一部の取材が認められ、2024年12月上旬に訪問した。本稿はその報告である。

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