トランプ大統領はウクライナを停戦交渉に巻き込むために、大きな圧力をかけている[会談が物別れに終わり、ホワイトハウスを後にするゼレンスキー大統領=2025年2月28日](C)AFP=時事

 ウクライナの研究者4名を含む7名で行った共同研究を英文書籍として公刊することができた。そこで私が担当したのは、ロシア・ウクライナ戦争の概念構成に関する議論と、「成熟」理論と「勢力均衡」を結び付ける議論を提示することであった。これらは、私が『フォーサイト』で行ってきた議論とも、重なり合うものだ(https://link.springer.com/book/10.1007/978-981-96-2295-5)。

 この書籍を通じて行った議論をもとにしながら、本稿は、あらためてロシア・ウクライナ戦争の概念構成が、どのように戦争の終結に関する理論的見込みと結びついてくるのかを論じる。そのうえで、現在進行形のアメリカのトランプ政権主導の停戦調停の注目点を描き出す作業を行ってみたい。

戦争が始まったのは2022年か2014年か

 2月28日のオーバル・オフィスでの「口論」は、それに先立って行われたドナルド・トランプ大統領からの一連の発言が伏線となったものだった。たとえば2月19日には、トランプ米大統領は、戦争開始の責任を、ウクライナやバイデン政権のアメリカやウクライナが負っている、という趣旨の発言をした。各方面で大きな反発が巻き起こり、ゼレンスキー大統領も「トランプ大統領は偽情報の空間にいる」と発言していた。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。