ペンシルベニア州の小さな町を抜ける(筆者撮影、以下すべて)

「トランプ王国」取材は10年目に突入した。この10年での顕著な変化は、当初は何かの間違いで起きたとも認識された「トランプ現象」が、今では、アメリカの現在地として広く受け入れられるようになったことではないだろうか。

「受け入れる」というより、「観念した」という表現が妥当かもしれない。

 2016年大統領選は、民主党ヒラリー・クリントン陣営がアメリカ中西部に広がるラストベルト(錆び付いた工業地帯)の重要州を十分に重視しなかったほか1、クリントン本人の「デプロラブル (deplorable=惨めな)」発言で猛反発も買い2、その隙をついたドナルド・トランプにミドルクラスや労働者層の支持を奪われた。民主党は全米での得票総数では勝ったのだから、普通にやればトランプに再び負けることはない――。実際、2020年は民主党ジョー・バイデンがトランプを破ったこともあり、そんな認識がしばらくは強かったように思う。

 ところが2024年大統領選でトランプの再登板をゆるし、今回は得票総数でも負けた。民主党の側が候補者をきちんと育てて臨まないと、「反不法移民」「保護主義」「非介入(孤立)主義」を掲げる共和党トランプへの支持を崩せない事実も突きつけられた。

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