「ヤルタ2.0」――大国による世界分割論をどう理解すべきか

Foresight World Watcher's 4 Tips

執筆者:フォーサイト編集部2025年3月9日
アメリカは欧州を失うという「屈辱」に耐えられるか[2025年2月8日、クリミア半島ヤルタにあるリヴァディア公園のアートギャラリーで「ヤルタ2.0」と名付けられた展覧会が開催、トランプ米大統領、ロシアのプーチン大統領、中国の習近平国家主席を描いた作品が展示された](C)REUTERS/Alexey Pavlishak

 米トランプ政権の脱価値的な外交を目の当たりにしたことで、「世界を決めるのはトランプ大統領のビッグディールだ」といった声がメディアにも増えています。批判にも悲観にも、あるいはどこか傍観のようにも感じられる見方ですが、話はそう単純ではなさそうです。

 ビッグディール論の背景にあるのは、ロシア・ウクライナ戦争の停戦交渉をめぐる当事者外し、つまりウクライナや欧州を交渉に参加させず、米ロ両国の直接交渉を軸に話を進めようというドナルド・トランプ大統領の姿勢です。ロシア側にもこれを歓迎する空気があり、大国同士による戦後体制決定という意味で、1945年に米英ソの連合国三カ国首脳が行ったヤルタ会談になぞらえ「ヤルタ2.0」と呼んでいるとも伝えられます。

 ただ、トランプ大統領は7日、自身のSNSに対ロ制裁強化を検討していると投稿しました。「ウクライナとロシア、いますぐ(交渉の)テーブルに着け」と脅す様子は、ロシアを対等な交渉相手と位置付けているようにも見えません。トランプ大統領が自国にロシア・中国を加えた三カ国で世界を分割支配しようとしているという見立ては、少なくとも現時点では“本筋”ではないように思います。

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