第3部 ミサイルの下で(1) ハルキウ、前線の静寂
2025年3月14日

破壊されたドライブイン「囲炉裏」。ハルキウから国境のある北へ向かう街道沿いで(筆者撮影、以下すべて)
ウクライナ第2の都市ハルキウは、今回のロシア・ウクライナ戦争で最も激しい攻撃にさらされてきた街の一つだろう。ロシア国境と市中心部とは三十余キロしか離れていないため、ロシア領内からはミサイルを使わないでも、砲弾やドローンによる大規模攻撃が可能である。また、ロシア語話者が多いことから、市民が占領に協力するだろうと、ロシア側は勝手に期待を抱いたかもしれない。
2022年2月24日、全面侵攻を始めたロシア軍は、ハルキウ市内に砲撃を加えるとともに、地上軍約2万人の態勢で街に迫った。彼らは、郊外での戦闘を経て27日には市街地に入ろうとしたが、ウクライナ軍が街道筋で激しく抵抗し、押し返した。翌28日、ロシア軍陸上部隊は郊外に撤退し、街は持ちこたえた。もしハルキウが陥落していたら、多くの犠牲者と莫大なインフラ被害はもとより、ウクライナ経済への影響も甚大だったに違いない。
筆者は侵攻の約2週間前にあたる2022年2月9日から12日にかけてハルキウに滞在し、ロシア国境地帯にも足を運んだ。その後、現地の情勢を気にかけてはいたものの、再訪する機会を失っていた。侵攻3周年を控えた2025年2月半ば、侵攻後として初めてハルキウを訪ね、知り合いと再会できたことで、少し義理を果たした気分である。
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