第3部 ミサイルの下で(5) キーウ、取り残される「正義」
2025年3月24日

「ヤルタ欧州戦略会議」の会合に登壇した元英首相ボリス・ジョンソン(以下、特記のないものはすべて筆者撮影)
2月のウクライナ訪問は、筆者にとって昨年9月以来5カ月ぶりである。この間に米国ではドナルド・トランプ(78)が大統領に就任し、世界情勢も大きな変化を被りつつあるが、それに比べるとウクライナ社会の変化は乏しいように見えた。確かに、ロシア軍の全面侵攻から3年が経ち、戦争疲れと戦争慣れ双方の側面がウクライナ社会には色濃い。占領された領土の回復が当面難しいことも認識されている。ただ、それは以前からうかがえた傾向であり、一方でロシアの侵略戦争や戦争犯罪に対して「正義」の回復を求める意識が弱まったようにも思えない。
筆者にとって前回訪問時との大きな違いは、これまでの定宿が使えなくなったことだった。ロシア軍全面侵攻が起きた2022年の間、キーウでは主に、文教地区にあるアルファヴィート・ホテルに滞在していた。しかし、その年の12月31日、ホテルはロシア軍の巡航ミサイルの直撃を受けて大破した。中にいた筆者は辛くも救出された。ホテルは閉鎖され、以後筆者はキーウを訪れる際、近くの「ホリデーイン・キーウ」を利用するようになっていた。
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