
切り札はICT、Eコマース、EV、ロボット、航空宇宙などのテック企業群と農畜産関連企業[「民営企業座談会」でディープシーク創業者の梁文鋒氏と握手を交わす習近平国家主席を映したスクリーン=2025年2月17日、中国・北京](C)REUTERS/Florence Lo
習近平国家主席の経済政策「シューノミクス」が静かに大きな転換を進めつつある。国有企業を牽引車とし、イノベーションによって、産業高度化を進め、世界の「産業強国」の先頭に立つのが目標だったが、国有企業は各産業分野で過剰生産能力を積み上げ、デフレと世界の警戒心を招き、内需拡大の柱の不動産開発は供給過剰で自滅した。対照的にスマホに始まり、太陽光発電パネル、リチウムイオンバッテリー、EV(電気自動車)など世界市場を席巻する中国製品は民間企業が主導している。
出口のみえない不動産不況、トランプ政権による先端技術封じ込めと関税戦争に苦しむ中国経済の生き残りはもはや民間活力にしかない。それは習主席が追い落とした前首相の故・李克強氏が唱えた「リコノミクス」への転換という不本意な結果になりかねない。
「双循環」を再稼働する切り札
習主席が2月17日に北京で主宰した「民営企業座談会」には31人の企業家が招かれた。ファーウェイの任正非氏、BYDの王伝福氏、寧徳時代新能源科技(CATL)の曾毓群氏らグローバル市場で実績と存在感のある企業の創業者とともに、今年1月に彗星のように現れたディープシークの梁文鋒氏も姿を見せた。話題をさらったのはアリババの創業者、馬雲(ジャック・マー)氏の姿だった。2020年10月の上海金融フォーラムでの発言が習主席を激怒させ、表舞台から消えていたが、この座談会では習主席と笑顔で握手を交わす場面が中国中央テレビで報道された。4年半ぶりの完全復権であり、再び中国のテック業界を主導していく自信を漂わせていた。
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