東部戦線で取材したウクライナ軍の戦車兵。この直後にドローンの攻撃を受けた(以下、写真はすべて筆者撮影)

 私は新聞社やテレビ局に勤める職業ジャーナリストでも、軍事専門家でもない。日本で生まれ育った20代後半の日本人大学院生だ。ただ、気になったことがあれば自分の目で確かめに行くことが、幼い頃から自然に身についた習慣だった。他人の言葉やメディアの報道を鵜呑みにせず、一次情報を自分で取りに行き、事実を見極めたいという思いが常にある。

 ウクライナへの渡航も、まったく同じ動機からだった。日本のメディアやSNSで語られていることは、どこまでが真実なのか。そして、もし“報道されていない現実”があるとすれば、それはどんなものなのか。

 戦場取材に興味をもったのは、高校生の頃。2015年、過激派組織ISISによって、シリアで日本人ジャーナリストらが殺害されるという衝撃的な事件がきっかけだ。危険な戦地に向かった彼らの行動に対し、日本国内では「自己責任論」や「首相の責任論」など、責任の所在ばかりが議論された。しかし私は、なぜ彼らが命を懸けてまで現地に向かったのか、その「動機」に強い関心を抱いた。誰もが避けるような危険地帯に足を踏み入れ、現地で見たこと・聞いたことを日本に伝えようとするその姿勢に、報道の本質と社会的な意義を感じた。そして、自分もいつか、そんな報道に関わる人間になりたいと憧れた。

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