最新の世論調査には、AfDの支持率がCDU・CSUを上回る結果となるものもある[記者会見するAfDのアリス・ワイデル共同党首=2025年04月09日](C)EPA=時事

 今年(2025年)2月23日のドイツ総選挙を受けて、中道保守のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と中道左派の社会民主党(SPD)の間で行われていた連立協定がまとまり、新首相にフリードリヒ・メルツCDU党首(69歳)が就くことがほぼ確実となった。新政権は多難が予想されるが、早々に直面することになる、特に対処の難しい二つの「相手」について、ベルリンでの選挙取材の結果も交えて考えたい。

 一つ目は、ドナルド・トランプ米政権であり、その外交・安全保障政策に対してどのように対応するか、という問題。二つ目は、今選挙で躍進した右派ポピュリズム政党「ドイツのための選択肢(AfD)」であり、協力をあくまでも拒否すべきか、あるいは取り込みに転換するべきか、という問題である。

米国つなぎ止めのための軍拡

 第1次政権でトランプ大統領は、「米国第一主義」を掲げ、「北大西洋条約機構(NATO)は時代遅れ」などと、ヨーロッパ安全保障への関与を軽視する発言を繰り返した。ヨーロッパでは、米国に依存しない道を探る「戦略的自律」の議論が起こった。続くジョー・バイデン政権で米欧は本来の同盟関係に戻ったものの、第2次トランプ政権の政策に対し、ヨーロッパはより切羽詰まった形で対応を迫られている。

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