追悼・徳岡孝夫――戦場にも神宿る瞬間を見逃さぬ人
2025年4月24日

徳岡孝夫氏 元毎日新聞記者、ジャーナリスト 2025年4月12日没 (C)新潮社
徳岡孝夫さんが亡くなったと聞き、強いショックと共に言い知れない喪失感を覚えている。享年95、老衰死とのことなので、ある意味で大往生とも言え、訃報は驚くべきことではないのかもしれない。しかし、不世出のジャーナリストを失ったという喪失感はあまりにも大きい。
アメリカの新聞界では、記者の誰もが目指し、尊敬を最も集めるのはコラムニストだとよく言われる。徳岡さんはまさしく、そのコラムニストだった。
コラムニストは記者としての全経験と全取材を活かして、その時々のテーマについて、考えに考え尽くしたエッセンスを短い文章に凝縮させる。だからこそ、読者の心を掴むのである。
紙の時代の「フォーサイト」を読んでいただいたことのある読者であれば、徳岡さんの名物コラム「クオ・ヴァディス」を覚えていて下さるだろう。
あのコラムは、1990年3月に私が国際情報誌「フォーサイト」を初代編集長として創刊することになった時、「どうしても定番コラムが欲しい」と、徳岡さんに三拝九拝して始まったものである。人間や社会を見る目が確かで、国際経験も豊富で、洞察力に優れた徳岡さんのコラムが雑誌に不可欠と思ったからだった。以来、徳岡さんは20年以上にわたって、同コラムを連載していただいた。
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