印パ危機に今のアメリカは何ができるか

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執筆者:フォーサイト編集部2025年5月5日
インドが軍事行動に乗り出す可能性は高いと見られる[反インド抗議デモでモディ首相に似せた人形を焼くパキスタン人民党(PPP)の活動家=2025年5月4日、パキスタン・ムルターン](C)AFP=時事

 インドとパキスタンの軍事的緊張が続きます。発端は4月22日、カシミール地方のインドが実効支配する地域で観光客26人が殺害されたテロ事件。同地方は「南アジアの火薬庫」と呼ばれ、英領インドからの印パ分離独立以来、その帰属をめぐって両国の対立が続いてきました。

 事件については、パキスタンを拠点とするイスラム過激派ラシュカレ・タイバ(LeT)の分派組織、抵抗戦線(TRF)が犯行声明を出しています。インドのモディ政権はパキスタンの関与を主張し強く非難、パキスタン側は関与を全面的に否定しています。

 アメリカは4月30日、マルコ・ルビオ国務長官が両国高官とそれぞれ協議、緊張の緩和を求めました。ともに核兵器保有国である印パの武力衝突が、国際社会にとって大きなリスクなのは明らかです。ただ、この問題についてアメリカは、もう一段複雑な立場に立っています。

 アメリカにとってパキスタンは、冷戦下ではソ連封じ込めの拠点として、2000年代の対テロ戦争期にはタリバンやアル・カーイダに対する掃討作戦のパートナーとして、地政学的に重要な意味合いを持ってきました。F-16戦闘機をはじめ武器も供給してきた経緯があります。

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