習近平の原点、文化大革命期の出版物は「大国への道筋」をどう描いたか
2025年5月8日

かつての毛沢東の宿願は、習近平政権の手で着々と達成されつつあるのかもしれない[手に『毛主席語録』を掲げデモ行進する紅衛兵たち=1966年6月1日、中国・北京](C)AFP=時事
ドナルド・トランプ米大統領が仕掛ける「関税戦争」を前に浮き足立つ日本の石破政権とは余りにも対照的に、本稿執筆時(4月末)でも中国政府は一向に動ずる気配をみせない。むしろ一歩も退くことなく対決姿勢を前面に押し出しているほどだ。2012年に中国の最高指導者の地位に就いて以来、習近平国家主席は年を重ねるに従って強硬姿勢を増すばかり。いったい、どのような思想信条を根拠としているのか。
1972年に世界が驚愕した「ニクソン訪中」を実現させ、その後の米中関係に様々な影響を与え続けたヘンリー・キッシンジャー(1923~2023年)は『キッシンジャー回想録 中国(上下)』(岩波書店、2012年)において中国の指導者の政治姿勢を世代で分け、「文化大革命による社会崩壊の時期に成人となった中国の指導部世代にとって、この理論(「平和的台頭」と「調和の取れた世界」)が描いているのは、魅力的に見える大国への道筋だった」と語る。これに対し、「経済的台頭」に加え「軍事的台頭」が必要であるという主張は「文化大革命を未成年期に乗り越えた世代の姿勢が反映されたものなのか」と綴っている。
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