政治ディールとしての米・ウクライナ資源協定
2025年5月10日

関係維持・強化のための政治ディール[協定に署名するスコット・ベッセント米財務長官とウクライナのユリヤ・スヴィリデンコ第一副首相=2025年4月30日、アメリカ・ワシントンDC](C)AFP=時事 / Facebook account of Ukraine's Deputy Prime Minister Yulia Svyrydenko
ウクライナの鉱物資源等の開発に関する米国とウクライナの間の協定が、紆余曲折の末に署名された。2025年4月30日夜のことだった。ぎりぎりまで厳しい交渉が続いたと報じられている。
本連載(3)では、この合意が意味するものを検討する。結論を先取りすれば、今回の合意は経済的なものというよりは、少なくとも当面は政治的な意味が大きい。米国・ウクライナ関係の維持や強化という政治目的のために経済が活用されたのである。合意への過程と中身を出発点に、米国とウクライナ双方にとっての意味、停戦交渉での位置付けなどを順に検討する。
合意への道と中身
今回署名された文書のうち、中心となるのは、「米国・ウクライナ復興投資基金設立に関する米国・ウクライナ政府協定」である。一般的には鉱物資源協定として言及されることが多いが、建て付けとしては、米・ウクライナ両国が拠出して復興投資基金(Reconstruction Investment Fund)を設立し、同基金が新規の投資を進め、そこからの収益――採掘のライセンス料、特別認可等――を米国とウクライナで折半することが基本となる。同協定は、資源の開発に限定せずに、これが米国とウクライナの全般的な戦略的パートナーシップを強化するものであることを強調している。
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