「米国的信条」が変化すれば、外交のあり方にも本質的な変化が生じ得る[政権発足100日を祝うトランプ大統領の支持者たち=2025年4月29日、アメリカ・ミシガン州ウォーレン](C)AFP=時事

 トランプ主義に関して書かれた本はあまたあるが、40年以上前に書かれた本が今日の米国政治を予言していたと言えば驚きであろう。

 1981年に出版された本の題名は、『米国政治:約束された不調和(American Politics: the Promise of Disharmony)』、著者は『文明の衝突』で有名な政治学者、故サミュエル・ハンチントンだ1。彼によると、米国政治においては、建国以来60年から70年の間隔で、「信条的情熱(Creedal Passion)」と呼ばれる激動が周期的に発生しており、この傾向がそのまま続けば、次の激動期は2020年代から30年代、すなわち今、生じることが予見されている。このことがトランプ主義をめぐる政治的変化を予言するものとも解釈できるのだ。

 ハンチントンがなぜこうした推論を立てたのか、そしてトランプ主義の台頭はその正しさを証明するのか。これらの疑問を吟味することは、いま米国政治で起こっていることを理解し、将来を占ううえで重要な手掛かりとなる。本稿では、彼の論考を紹介するとともに、筆者の考察をまとめてみた。

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