
トランプ大統領(右)との会談を終えた南アのラマポーザ大統領(左)は、G20不参加問題が俎上にのらなかったことを「成功」と評価した[“ジェノサイドの証拠”だという記事を掲げるトランプ大統領=2025年5月21日、アメリカ・ワシントンDC](C)EPA=時事
ドナルド・トランプ米大統領のマルチラテラル(多国間)嫌いは、もう指摘するまでもなさそうです。ただ、マルチの枠組みはアメリカがその参加国に影響力を行使しうる場でもあります。いわば、いくつもの国に網をかけ、おかしな方向に行かないように歯止めをかける保険のようなところがあるわけですが、これを「保険料が無駄」と次々解約している格好です。
5月13日から16日の中東歴訪でも、マルチの協議はGCCとの首脳会合だけにとどめ、経済協力に焦点を絞った個別ディールに専念しました。詳細は村上拓哉氏(中東戦略研究所シニアフェロー)の論考をご覧いただければと思いますが、ガザとイランに加え、シリア新政権や米-イスラエルの関係悪化など、中東情勢のアクターの利害は一層、錯綜してきています。ここでマルチの枠組みを自ら手放すならば、それは悪手に思えてなりません。
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