
同盟国による「公平な負担」を求める声はアメリカ国内にも広がっている[比米合同軍事演習「バリカタン40-2025」の開会式=2025年4月21日、フィリピン・アギナルド基地](C)EPA=時事
石破茂首相が就任直前、米ハドソン研究所に寄稿した「アジア版NATO」は多くの論議を呼びました。地域情勢を踏まえた観点からも、あるいは日本国憲法との整合性の面からも現実味は薄い構想であり、専門家の多くは批判的な立場を取っています。
その批判の根拠には、しばしば「SEATO(東南アジア条約機構)の失敗」が挙げられます。冷戦期の反共軍事同盟として1954年に結成されたSEATOは、加盟国の足並みが揃わず1977年に解散。アジアの安全保障体制は、米国との二国間同盟が束になる現在のハブ・アンド・スポーク型が基調になりました。
ただ、この体制はアメリカが“ハブ”としてアジアの防衛において多くの負担を担うことが前提です。「そんな負担はもう嫌だ」との意識がアメリカにおいて高まれば、「アジアに集団防衛体制を」との声が浮上する余地も生まれるでしょう。今回取り上げたイーライ・ラトナー氏(バイデン政権のインド太平洋安全保障問題担当国防次官補)の論考は、そうしたバランスの上に立っています。
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